どうぞのいす 劇の小道具完全ガイド|保育園・幼稚園の発表会準備
どうぞのいす 劇の小道具完全ガイド|保育園・幼稚園の発表会準備
秋が深まるにつれ、全国の保育園・幼稚園では発表会シーズンの準備が本格的に始まる。なかでも定番中の定番として毎年選ばれ続けているのが、香山美子・作、柿本幸造・絵の絵本を原作とした「どうぞのいす」の劇だ。長年色あせることのないデザインと物語で30年以上愛されてきたこの絵本は、保育の現場においても圧倒的な人気を誇る。しかし実際の劇づくりとなると、台本や衣装だけでなくどうぞのいす劇の小道具の準備が意外なほど大変だ。何をどう作るか、舞台上でどう管理するかで、当日の仕上がりが大きく変わってくる。
なぜ「どうぞのいす」は劇に選ばれ続けるのか
絵本名は「どうぞのいす」。作:香山 美子、絵:柿本 幸造、出版社:ひさかたチャイルド。うさぎさんが作った椅子をめぐって次々に繰り広げられるとりかえっこで、「どうぞ」にこめられたやさしさが伝わってくるロングセラー絵本だ。ストーリー構造がシンプルな繰り返しでできているため、子どもたちが流れを把握しやすく、セリフも覚えやすい。
最初に木陰にやってきたのは、ロバさん。拾ったドングリを背負ったかごいっぱい入れている。ロバさんは疲れていたので、「よっこらしょ」とかごを椅子の上に下ろし、自分は木の幹に寄りかかって昼寝を始めた。そこへ腹ぺこのクマさんがやってきた。椅子の上のかごには、大好きなドングリがたくさん。クマさんはどんぐりを全部むしゃむしゃと食べてしまい、「からっぽのままでは後の人におきのどく」と言って、持っていたはちみつの瓶をかごに入れ、立ち去った。この「次の人への思いやり」という連鎖が、劇全体のテーマを自然に子どもたちに伝えてくれる。
動物たちはそれぞれの思いやりの気持ちを"お返し"として置いていく。誰かのためを思う心がやさしくつながっていく、3歳児さんでも分かりやすく演じられるあたたかいお話だ。登場キャラクターが動物ばかりというのも、子どもの感情移入を助ける大きな要素になっている。
どうぞのいす劇に必要な小道具一覧
どうぞのいす劇の小道具は、大きく分けると「ストーリー進行に直結するもの」と「場の雰囲気を作るもの」の2種類がある。前者が舞台の流れを左右するだけに、準備の優先度は高い。
たてふだ、どんぐり、パン、はちみつ、カゴ、トンカチなど、「どうぞのいす」の劇では過去最高ハードな作り物の量になることもある。そして道具が揃わないと子どもたちの練習が始められないという前半のハードさもあるため、挑戦する先生方には事前の小道具準備をおすすめする。
具体的には以下の小道具が必要になることが多い。
- 「どうぞのいす」の看板(たてふだ):うさぎさんが椅子のそばに立てる小さな木の立て札
- 木の椅子(いす本体):物語の中心となる大道具的な役割を担うアイテム
- どんぐりのカゴ:ろばさんが背負ってくるかご。中には丸めた新聞紙や茶色いボールを詰めて表現することが多い
- はちみつの壺(つぼ):くまさんが置いていく代表的な小道具
- パン:きつねさんが持ち込む食べもの
- 栗(くり):りすさんたちが置いていく最後の食べもの
- トンカチ:うさぎさんが椅子を作る場面で使う道具
各小道具の手作りアイデアと材料
はちみつの壺(つぼ)の作り方
バケツやごみ箱など身の回りにあるツボっぽいものを探し、茶系の画用紙を巻いて土台を作る。その後、好みの装飾をして、黄色画用紙ではちみつが垂れている部分を作る。適当にチョキチョキ切ると、それっぽい仕上がりになる。さらに「HONEY」のロゴをパソコンで打って印刷すると、切るだけで貼れるので便利。大きさは子どもが抱えやすいサイズに調整しよう。
「どうぞのいす」立て札の作り方
「どうぞのいす」という看板やうさぎが作ったいすのしっぽをカメラの近くで見せることで、子ども達が劇に関心を持つことができるようにした。立て札は段ボールや厚紙に筆ペンで大きく「どうぞのいす」と書き、割り箸や木の棒に貼り付けるだけで十分。子どもでも見えるよう文字は大きめに。背景に使うなら下部を重りつきの台に固定すると安定する。
トンカチの作り方
トンカチは打つ方を下に向けて、持ち手はポシェットからはみ出るくらいにすると収納しやすい。本体は空き牛乳パックを重ねて形を作り、ガムテープで補強した後に茶色の画用紙を巻くだけ。軽くて安全性が高く、子どもが手に持って動きやすいのがポイントだ。
どんぐりカゴの作り方
大きめのカゴやバスケット型の容器を活用し、中に丸めた茶色い新聞紙やフェルトボールを詰めるとどんぐりらしく見える。劇の流れの中で「食べた後」の処理が必要になるため、フタ付きのものを使うか、袋状のポーチに入れて素早く取り出せる工夫をすると舞台上での動きがスムーズになる。
小道具の管理と入れ替えはどうする?
多くの保育士が最も悩むのが、舞台上での小道具の受け渡しと回収だ。特に3歳児クラスでは、子どもたちが出っぱなしのスタイルで劇を行う場合も多く、動線の管理がひと苦労になる。
子供たちの座る近くに箱を置いてその中から持ってくる、またはポシェットを作り子がかけて、その中に入れるという方法が考えられる。大道具に木を用いるなら、その木の後ろに箱を置いておくのもよいアイデアだ。舞台の背景となる大道具と一体化させることで、観客から見ても違和感がなくなる。
食べた後の小道具の処理については、少しセリフを足して「お家に持って帰ることにする」「お友達にも少し分けてあげよう」という流れを加えたり、ゴミが出るものであれば「ゴミはゴミ箱に!」として捨てるシーンを加えて笑いを取るなど、工夫が可能だ。
ひとつの動物につき2人にして2人で分けるという方法も、人数が多いクラスでは有効だ。小道具を持つ子と演じる子を分けることで、道具の紛失リスクも減らせる。
衣装と小道具を子ども自身で作る意義
小道具・衣装はすべて子どもたちが作り上げた。帽子は子どもたちが紙皿に折り紙をちぎって貼って作成し、衣装も型紙に子どもたち自身が布を貼り付けて作った。自分たちで作り上げた劇だったからこそ楽しく演技することができた。
劇に必要な小道具作りを楽しんでいる子どもたち。自分で作った小道具を持つと、いつもよりやる気も楽しさもアップする様子が見られる。製作の工程そのものが、劇への「参加意識」と「所有感」を育てる学びの場になっている。これは単なる発表会の準備を超えた、豊かな体験だ。
この経験を通して、友だちと同じ目標を達成することで「協同性」が育まれた。劇を作り上げる中では衣装のデザインを決める話し合い、衣装作成から「言葉による伝え合い」、役になりきって演じたことからは「豊かな感性と表現」が育まれた。保育者にとっても子ども自身が作った道具を使うことは、劇全体の完成度を高める有効な手段になる。
背景画(大道具)との一体感を出す工夫
短い劇は、最初から最後まで、できれば1枚の背景で通せるようなデザインにしよう。途中で背景を変えると、その間流れが途絶え、見ている方も子どもたちも集中が途切れる。「どうぞのいす」はストーリー自体がシンプルな反復構造なので、1枚の背景で対応できるのが強みだ。
背景は「大きな木と野原」を中心に描くと、物語の世界観と自然に一致する。小道具を一時的に置く「スポット」を背景の木の根元や茂みに設定しておくと、動線が視覚的にも整理されて観客にもわかりやすい。「どうぞのいす」の絵本のページを参考に描いた背景は、細かい部分を気にしすぎず、仕上げは絵の具でという割り切りが大事だ。
オペレッタ形式での上演と小道具の違い
3歳児の発表会で、はじめて「どうぞのいす」のオペレッタに挑戦したケースでは、役がすべて動物で、場面転換も単純で把握しやすいという点では指導がしやすく、子どもたちの覚えも早かった。
年中組はオペレッタ「どうぞのいす」を楽しんでいる。セリフがたくさん増えたが、お友達と気持ちを揃えて言えるようになってきた。劇中では、でんぐり返しやブリッジ、スキップなど運動遊びにも挑戦している。オペレッタ形式では歌に合わせた動きが求められるため、小道具はなるべく軽く、かつ動きを妨げない設計にすることが重要になる。
小道具作りのスケジュール管理のすすめ
発表会当日まで逆算したスケジュール管理が、劇成功の大きな鍵になる。小道具は「練習が始まる前に揃っている」が理想だ。道具が揃わないまま練習を始めると、子どもたちのイメージが定まらず、動きがちぐはぐになりやすい。
目安として、発表会の1か月半前には主要小道具をすべて完成させ、1か月前からは実際に持たせて動きを確認する流れが望ましい。はじめての発表会で取り組む、難しすぎないけどしっかり「劇あそび」になる作品として「どうぞのいす」は最適だ。だからこそ、準備の段取り一つで完成度が大きく変わる。
子どもが主役の劇を成功させるために
「どうぞのいす」は劇をするのには向いているけれど、そこから遊びを展開させていくことが難しく苦労した。しかし「どうぞのいす」のおもしろさに注目しながら話の内容に関連付けた遊びをみんなで考え、楽しい劇を作ることができた。
小道具の完成度だけを追いかけるのではなく、子どもが「自分も劇を作っている」と感じられる関わり方が大切だ。子どもに候補をいくつか上げて選ばせてみたり、子どもたちに聞いてみたりするなど子どもを巻き込むことで、劇に対しての取り組みが前向きになる。
発表会が終わった後も劇ごっこの小道具を使って遊んでいる子どもたちの姿が見られる。それこそが、本当によい劇の証だ。小道具が単なる「当日の道具」ではなく、子どもの遊びを豊かにする素材になったとき、「どうぞのいす」の世界観がはじめて完成する。
まとめ:小道具の準備が劇の質を決める
どうぞのいすの劇における小道具は、看板・いす・どんぐりのカゴ・はちみつの壺・パン・栗・トンカチなど多岐にわたる。各アイテムを手作りすることで製作コストを抑えながら、子どもたちの参加意識を高められる。舞台上での管理には、ポシェットや隠し箱を活用するのが実践的だ。背景画との一体感を意識した配置も、観客の目線をスムーズに誘導する助けになる。準備は早めに、子どもを巻き込みながら進めることで、発表会当日の完成度は格段に上がるはずだ。思いやりの連鎖を描いたこの物語が、保育の現場でまた新たな感動の場面を生み出すことを願っている。